ウェブサイト・コンテンツ制作やインストラクター派遣などを手掛ける、ラッシュ・インターナショナル
(本社名古屋市中区新栄二ノ二ノ二四、倉田雅美子社長、電話052・249・4141)はこの三月、七百万増資し、 有限会社から株式会社へ改組した。資本の制限がある、一般労働者派遣事業者の許可を取得してもらいたいと、 一人のスタッフが申し出たためだ。
 他の社員は最初「今、無理に増資しなくても」と反対した。しかし、申し出たスタッフが「派遣先の企業も喜んでくれ、 本当に嬉しかった」と話すのを聞くと「資金集めは大変でも起業してよかった。大企業では、この充足感は得られない」と思う。
 大学を卒業後、トヨタ自動車に入社した倉田社長は、車両部(現営業本部)で商品・販売企画に携わった。仕事は楽しく 充実していたが、二十四歳で結婚と同時に退職。「当時、結婚後も働く女性がいなかった。結婚したら退職するのが当たり前の時代」 だったからだ。しかし友人は皆、まだ会社勤め。「それならと、ソフト開発会社に再就職した。理数系出身だったので、 プログラマーになろうと考えた」。
 だが、ソフト会社の社長から「機械に向かっているより、話す方が向いている」とアドバイスされ、パソコンインストラクターと して独立。二十代後半で個人事務所「オフィス・ラッシュ」を立ち上げた。
 この間、優秀な女性インストラクターに多く出会った。しかし結婚すると、能力を発揮できる場所が減っていると感じた。 女性が自分の能力を生かせる会社を作りたいー。発起して〇二年に会社を立ち上げた。
 スタッフには時間を拘束しない代わりに、成功報酬制を導入した。自身は子供を寝かせた後、会社に戻り、明け方に 帰宅したこともあったが、社員に強要しないと決めている。学校の長期休暇にはベンチャーハウスの会議室を借り、 スタッフの子供たちと昼食を食べる。それでも「女性のスキルを生かすという経営理念は、永遠のテーマ」と痛感する。
 在宅スタッフが、仕事で夜遅く電話をかけてきたことがある。応対していると、男性に代わり「こんな時間に 妻を働かせないでくれ」と怒鳴られたことも。社員を強要しないと決めても、一人で対応できないトラブルもある。 そんな時はスタッフで話し合い、皆で原因と対策を追求する。一つずつトラブルを解決し「ようやくきれいごとでなく、 会社の社会貢献という意味が分かってきた」。
 会社を大きくしたいとは思わない。子供に継承したいとも思わない。「いいパートナー、いい顧客がいい仕事を つれてくる」と信じて、顧客はあえて選別する。スタッフの大半はトヨタの元社員。少人数でいかに生産性を上げるか、 いつも話題になるという。